高血圧はなぜ怖いか


●高血圧の問題点
高血圧が怖いのは、ほとんど自覚症状なく進行し、放置すると動脈硬化を促進して死亡率の高い脳卒中(脳出血や脳梗塞)や虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症)の原因になるためです。高血圧がサイレンとキラー(静かな殺し屋)と呼ばれるのはこのためで、早期発見による適切な治療の重要性が指摘されています。
 もう一つの問題点としては、高血圧は根本的に治すことが大変難しい病気であるということです。治療の基本は生活改善、または薬の力を借りて血圧を目標値まで下げることで、長期に渡り根気よく治療を続けていく必要があります。継続的に我慢強く治療する必要があるため、治療を途中で投げ出す患者さんも多く、これも問題点の一つとして挙げられます。
 

●血圧をどこまで下げるべきか?
最も新しい日本高血圧学会のガイドラインでは、最高血圧130mmHg以下、最低血圧85mmHg以下を正常血圧としていますが、これは従来の基準(最高血圧140mmHg以下、最低血圧90mmHg以下)より厳しくなっています。血圧を低い状態に保ったほうが、脳・心血管障害の発生を抑えられるということが、大規模な疫学調査により明らかになったからです。ただし、高齢者では降圧の目標値も若い人より高く設定し、また血圧も徐々に下げることが一般的です。これは、高齢者の場合血圧が変動しやすく、あまり血圧を下げると血液の循環に影響を及ぼし、立ちくらみやめまい、時には脳梗塞を誘発する場合があるためです。いずれにしても、高齢者の降圧治療は一律に降圧目標を決めることが難しく、患者さんの身体状況に応じて医師が最終的に判断することになると思います。