三叉神経痛の手術


顔の感覚をつかさどる三叉神経になんらかの異常が生じて、突然電撃様のはげしい痛みのみられる病気です。中枢神経に関連しておこる本態性三叉神経痛と、末梢神経領域の様々な原因(歯や副鼻腔の炎症性病変など)によって二次的におこる症候性三叉神経痛とがあります。いわゆる本態性三叉神経痛は以前は原因不明とされていましたが、近年になって頭蓋内で三叉神経が動脈硬化などで屈曲した脳深部の動脈や静脈に圧迫されて起こることが分かっています。また、脳腫瘍が三叉神経を圧迫したり、癒着することによっても起こるといわれています。三叉神経痛の痛みは非常に激しく、痛みは発作的に間隔をおいて起こります。痛みが起こると夜も眠れず、日常生活の支障になることも少なくありません。その症状の激烈さ故に、当然なんらかの治療が求められることになります。

 治療は、症候性のものでは原因を精査し、判明した場合には原因療法を行なえば治癒します。本態性では、軽症例に対しては抗けいれん剤のカルバマゼピン(テグレトール)が特効薬として昔から知られています。軽い神経痛の場合、薬物療法で痛みがとれることも多く、まず治療の第一次選択になると思われます。しかし、残念なことに時間の経過と共に徐々に薬の効果が薄れるため、薬を増量することを余儀なくされ、そのためテグレトールの副作用であるふらつき、眠気、脱力感などが問題となってきます。、薬物療法が無効となれば、以前は、神経ブロック(外科的な切断やアルコール注射)も行なわれてきましたが、顔面の知覚障害を来たすこと及び再発が多いなどの問題点があります。

 しかし、近年では三叉神経痛のの殆どは、脳血管が三叉神経の根元の部分を圧迫することが原因であることが分かったため、脳外科手術によって、この血管の圧迫を取り除く治療が広く行われるようになりその有効性が証明されています。この方法は微小血管減圧術とよばれ、その有効率は80−90%以上といわれています。手術は全身麻酔下に行い、まず耳の後ろの皮膚に約7-8センチの皮膚切開を行います。次いで、直下の頭蓋骨に直径約4センチ程度の骨窓を開け、この部より顕微鏡下に脳の深部に至り、原因となっている圧迫血管を探索し、原因血管が見つかったら慎重にその血管を三叉神経からはずし、神経と血管の間にテフロン繊維などでできたクッションを挿入して二度と神経に圧迫が加わらないようにするのです。時に、手術により難聴を来たすことがありますが、熟練した術者により手術が行われば安全な手術と言えるでしょう。

 最後にこの三叉神経痛に対しても最近注目されているガンマナイフ治療が保険適応になったことを付け加えておきます。この治療法は「ガンマナイフについて」の項でも説明しました様に患者さんに対する肉体的負担も軽く、2-3日の入院で治療可能な画期的方法です。長期成績がどの程度のものかまだはっきりしない点に問題がありますが、三叉神経痛において手術と並ぶ治療上の選択肢になるかもしれません。、