髄膜腫の手術


髄膜腫は全脳腫瘍のうち約22%を占めるといわれ、中年の女性に多い脳腫瘍です。良性腫瘍であるため、通常はゆっくりと大きくなり徐々に脳や脳神経を圧迫していきます。症状は頭痛のみの場合から,発生する部位により精神症状・手足の麻痺・知覚障害・視力視野障害・嗅覚障害や痙攣発作をきたす場合もあります。そのまま何の治療もせず腫瘍を放置すれば症状は進行し、最後には頭蓋内の圧力が高まり生命に危険を及ぼすようになります

 普通、髄膜腫はゆっくりと大きくなる良性腫瘍であるため、脳ドックなどで偶然髄膜腫が見つかった場合などに一刻を争って治療しなければならないと言うわけではありません.しかし、徐々にではあっても腫瘍は確実に大きくなる事が多く、しかも腫瘍が大きくなればなるほど手術は難しくなるので、特に若い患者さんでは手術により早期に腫瘍を摘出するのが最も根本的な治療法ではないかと思われます。

 髄膜腫は脳の色々の部位で発生しますが、その殆どの部位で完全摘出することが可能です。良性腫瘍ですので完全摘出すれば病気も完治したということになります。しかしながら、脳の深部に存在するものや重要な血管・神経を巻き込んで腫瘍が大きくなっている場合には、これら血管や神経の損傷を避けるため、あえて腫瘍の部分摘出に終わらざるを得ない場合もあります。しかし、こうした場合でも腫瘍の周辺組織への圧迫を軽減することができ神経症状が改善することが期待できます。

 ただし、髄膜腫は発見すればすべて手術と言うわけではなく、特に高齢な患者さんで無症状の場合には、手術による合併症の危険も考慮して、経過を見るだけのことも多いことは知っておいて下さい。

 髄膜腫に対するその他の治療としては、ガンマナイフによるものが挙げられるでしょう。通常この方法は、腫瘍の大きさがが3cm以下で、外科手術による摘出が困難と思われるような部位に腫瘍が存在する場合、あるいは外科手術後の残存腫瘍に対して行われることが多いと思います。ガンマナイフは頭蓋骨を開けることなく、2-3日の入院で治療可能な画期的方法ではありますが、髄膜腫の場合、ガンマナイフ治療により腫瘍が消失することは殆どなく、むしろ腫瘍の増大を抑えるための治療と理解したほうが良いでしょう。髄膜腫が良性腫瘍であり全適すれば治る腫瘍であることを考慮すると、高齢者の場合や手術の危険度が高い場合を除いて第一選択となる治療にはなりにくいと思います。