症状のない脳梗塞(脳の血管がつまって脳組織の一部が死んでしまうこと)のことを無症候性脳梗塞といいます。たまたま脳ドックを受けて、この様な診断が下される場合もあるかと思います。無症候性脳梗塞の殆どは脳の深部の小さな梗塞で、年代別にみると50歳台で5.3%,
60歳台で18%, 70歳台で18%と加齢と共に増加すると報告されています(島根難病研究所脳ドックデータ)。この報告によると無症候性脳梗塞を認めた人の脳卒中発症率は梗塞のない場合に比べて、約8.8倍であり、明らかに脳卒中の予備軍といえます。発症した脳卒中の内訳は脳梗塞が多いですが、脳出血も20%に見られます。
さて、無症候性脳梗塞と診断された場合、どうすればよいのでしょうか。まずすべきことは、喫煙・多量の飲酒などの悪習があればまずこれを改め、カロリーのとり過ぎや運動不足にも注意する必要があります。これと同時に、高血圧や糖尿病、高脂血症などのいわゆる危険因子と呼ばれる病気の有無を確認し、もし異常が見つかればこれら危険因子の治療を十分に行うことが基本となります(詳しくは脳梗塞をふせぐにはを参照して下さい)。半身麻痺などの症状を実際に呈した症候性脳梗塞の場合には、脳梗塞の再発予防のために抗血小板剤や抗凝固剤の投与を行うのが一般的です。しかし、これら薬剤の副作用により脳内出血などの合併症をきたす場合もあり、無症候性脳梗塞に対して(特に高齢者の場合)予防的にこれらの薬剤を投与することには慎重であるべきと思われます。