一口にボケと言ってもその原因は様々で、実はその中には簡単な脳外科手術や薬物治療によって劇的に治せるものも含まれます。こうした治せるボケはボケ全体の約10%ありますから、詳しい原因を調べる前に「ボケは年のせいだからしかたがない」とか「一旦ボケになってしまったら治らない」と諦めてしまうのは、みすみす治療可能なボケを見逃すことにもなりかねません。
●脳外科手術で治せるボケ
・慢性硬膜下血腫;局所麻酔で行う簡単な手術で症状は劇的に改善します
・正常圧水頭症;脳室-腹腔短絡術と呼ばれる簡単な手術で治ります
・良性の脳腫瘍の一部;腫瘍を摘出し、脳に対する圧迫を取り除いてやれば治ることがあります
●薬で治せるボケ
・甲状腺機能低下症;血液検査で診断がつきます。甲状腺ホルモンの内服にて治すことが可能です
・うつ病;うつ病が一見痴呆症状の様な症状で発症することがあります。もちろん抗うつ剤で治ります
・薬の副作用によるボケ:安定剤・睡眠薬などが原因となる場合があります。薬を中止すれば治ります
・その他、糖尿病や脱水, ビタミンB1欠乏などもボケに似た症状を引き起こすことがあります
痴呆を来たす病気の中でも、最も有名なアルツハイマー病は残念ながらその原因がいまだはっきり解っておらず、症状の進行をある程度遅らせる薬はあっても、根本的な治療法や予防法はないのが現状です。しかしながら、日本人の痴呆の原因としてアルツハイマー病と同等かそれ以上に多い脳血管性痴呆は、その原因が脳卒中(脳血管障害)であることがはっきりしています。つまり、脳血管障害(特に脳梗塞)を防ぐ努力はそのまま脳血管性痴呆を防ぐことにつながるのです(詳しくは脳梗塞を防ぐにはを参照してください)。