高齢者の頭部打撲後の注意点

−慢性硬膜下血腫について−


若い方の頭部打撲ではあまり問題になりませんが、一般に60歳以上の高齢者が頭をぶつけた場合に特別な注意が必要になります。どういう事かと言いますと、高齢患者さんの場合、打撲後に特に神経症状もなく、また頭部CTで異常がない場合でも、受傷後1-2ヶ月して脳の表面に血液が徐々に溜まってくる病気になることが時にあるのです。この病気は慢性硬膜下血腫と呼ばれ、脳の表面を覆っている硬膜と脳の間(つまり硬膜の下)に血液が徐々に溜まることで血液が脳を圧迫し、手足の麻痺や言語障害あるいはボケ症状を来たす疾患です。タンスの角に頭をぶつける程度の比較的軽微な外傷でも起こることがあり、必ずしも頭部打撲の程度とは関係なく起こります。幸いにして、この病気は高齢者にも安全に行える簡単な脳外科手術で治せます。ただ、症状の出現が頭部打撲後かなり経過して起こるため、本人・ご家族もその症状が頭のケガと関係があると気づかれないこともあり、高齢者の頭部打撲後の注意点として知っておかれたらよいと思います。